2025年には認知症の患者数は700万人、65歳以上の方の5人に1人は認知症になると言われています。
今では当たり前のように聞かれるようになった「認知症」という言葉。
この認知症の診断は、病院において簡易テストや脳の画像診断などをもとに行われます。
今回は、その判断基準のひとつである認知症の診断テスト「長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」についてまとめていきます。
認知症の診断テスト「長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」
認知症が疑われるときには、専門の病院を受診して簡易テストや脳の画像診断を行います。
そして、その結果をもとに医師によって認知症であるかどうかの判断を行います。
このときの簡易テストで行われる代表的なものが「長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」という認知機能テストです。
この長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は、9つの評価項目において質問形式で行われる認知機能テストで、30点満点中20点以下の場合、認知症の疑いがあると診断されます。
長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
質問内容 | 評価ポイント/点数 (合計30点) |
---|---|
①年齢 ・年齢はおいくつですか? | ±2年の誤差までなら正解(1点) |
②日付の見当識 ・今日は何年何月何日何曜日ですか? | それぞれ答えられたら正解(計4点) ・年(1点) ・月(1点) ・日(1点) ・曜日(1点) |
③場所の見当識 ・私たちが今いる場所はどこですか? | ・自発的に発言し正解(2点) ・5秒たち、家ですか?病院ですか?施設ですか?のヒントで正解(1点) |
④即時記憶 ・3つの言葉を言ってください。あとでまた聞くので覚えていてください。 (1)桜、猫、電車 (2)梅、犬、自動車 ※どちらか片方で行う | それぞれ答えることができたら正解(計3点) 例. ・桜(1点) ・猫(1点) ・電車(1点) |
⑤計算 ・100から7を順番に引いてください。 ※93を答えることできたら、そこからさらに7を引いてもらう。 | ・93を答えられたら正解(1点) ・86を答えられたら正解(1点追加) |
⑥逆唱 ・私がこれから言う数字を逆から言ってください。(6-8-2、3-5-2-9) | ・「2-8-6」と答えられたら正解(1点) ・「9-2-5-3」と答えられたら正解(1点) |
⑦遅延再生 ・先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。(④の設問のつづき) | ・自発的に正解(各2点)(最大計6点) ・ヒントで正解(各1点) 例. ・桜(2点 or 1点) ・猫(2点 or 1点) ・電車(2点 or 1点) |
⑧視覚記憶 ・これから5つの品物を見せます。それを隠すので何があったかを言ってください。(時計、鍵、タバコ、ペン、硬貨など必ず相互に無関係なもの) | ・1品正解につき1点(各1点)(計5点) |
⑨語想起・流暢性 ・知っている野菜の名前をできる限り多く言ってください。 | ・0~5個以内しか答えられない(0点) ・6個答えられた場合(1点) ・7個答えられた場合(2点) ・8個答えられた場合(3点) ・9個答えられた場合(4点) ・10個以上答えられた場合(5点) |
① 年齢
「年齢はおいくつですか?」と質問します。
答えた年齢を確認し、2年までの誤差は正解にします。
例えば、90歳の場合には88歳、89歳、90歳、91歳、92歳が正解になります。
正解の場合:1点
② 日付の見当識
「今日は何年何月何日何曜日ですか?」と質問します。
「年」「月」「日」「曜日」について正解した部分に1点ずつ点数をつけます。
○年が正解で1点、○月が正解で1点、○日が正解で1点、○曜日が正解で1点となり、全部正解なら合計4点になります。
それぞれが答えられたら正解:各1点で合計4点
③ 場所の見当識
「私たちが今いるところはどこですか?」と質問します。
自発的に答えられたら正解(2点)にします。
答えられない場合には5秒おいて「家ですか?病院ですか?施設ですか?」とヒントを出して、答えられた場合にも正解(1点)にします。
自発的に正解(2点)
ヒントで正解(1点)
④ 即時記憶
「これから言う3つの言葉を言ってみてください。あとでまた聞きますので覚えておいてください。」と伝えます。
「桜、猫、電車」か「梅、犬、自動車」のどちらかを復唱してもらいます。
復唱できたら正解(各1点)にします。
例えば、「桜、猫、電車」を用いた場合、「桜」「猫」だけ言えれば2点になります。
それぞれが答えられたら正解:各1点で合計3点
⑤ 計算
「100から7を順番に引いてください。100ー7は? 」と質問をします。
93を答えることができた場合には「それからまた7を引くと?」と質問します。
最初の答え(93)が不正解の場合には質問を打ち切ります。
93が答えられたら正解(1点)
86が答えられたら正解(1点)
⑥ 逆唱
「私がこれから言う数字を逆から言ってください。」と伝えます。
「6-8-2」 「3-5-2-9」の2つの数列について答えてもらいます。
「2-8-6」と答えられたら正解(1点)
「9-2-5-3」と答えられたら正解(1点)
⑦ 遅延再生
「先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。」と伝えます。
”④”で覚えてもらうようにお願いした「桜、猫、電車」か「梅、犬、自動車」を言ってもらいます。
自発的に回答があれば各2点です。
もし回答がない場合には「植物、動物、乗り物」とヒントを与えて答えてもらいます。
ヒントを与えて正解した場合には各1点になります。
自発的に正解(各2点)
ヒントで正解(各1点)
⑧ 視覚記憶
「これから5つの品物を見せます。それを隠しますので何があったか言ってください。」と伝えます。
時計・鍵・タバコ・ペン・硬貨など必ず相互に無関係なものを見せてから隠します。
その後、隠したものを答えてもらいます。
1品正解につき1点
各1点で合計5点
⑨ 語想起・流暢性
「知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。」と伝えます。
思いつく限り野菜の名前を答えてもらいます。
答えることができた野菜の数に応じて点数をつけます。
0~5個以内しか答えられない/0点
6個答えられた場合/1点
7個答えられた場合/2点
8個答えられた場合/3点
9個答えられた場合/4点
10個以上答えられた場合/5点
認知症の診断テスト「長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」を解説!!|まとめ
今回は、認知症の判断基準のひとつである認知症の診断テスト「長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」についてまとめました。
この認知機能テストは、5~10分程度で終わるため誰でも簡単に行うことができます。
認知症は早期発見・早期治療で予後がかなり異なるため、もし、家族で認知症が疑われる方がおり病院受診を嫌がっている場合などには、クイズ形式で試してもよいかもしれません。
認知症の診断は、簡易テストや脳の画像診断などを含めて総合的に判断されるので、病院受診はきちんと行ってください。