【病院の検査】CT検査をもっと詳しく解説していきます

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CT検査とMRI検査の違いは?似ているように見えても全然違う!!」で、CT検査の概要について簡単に触れました。

今回は、CT検査について細かい部分が知りたい方向けに、さらに詳しくまとめていきます。

目次

CT検査をもっと詳しく解説

CTという名称は”Computed Tomography”を略したもので「コンピュータ断層撮影」という意味があります。

X線を使って身体の断面を撮影する検査であり、身体の周りからエックス線をあてて、体を通過したエックス線情報をコンピュータで解析し、連続した断層画像(輪切りの画像)を収集します。

収集した画像は検査終了後に再構成して、任意の断面や3D画像(立体的な写真)をつくることも可能です。

今回は、このCT検査について以下の項目を解説していきます。

① CTの撮影原理

CT装置のガントリー内にはX線管球と検出器が対になって回転するように設置されています。

CT撮影では、このX線管と検出器が対の状態で回転しながらデータ収集を行います。

  • X線管:X線を発生する
  • 検出器:撮影部位を通過したX線を受けとる

検出器で収集されるX線は、撮影する部位の「X線の吸収率」の差に影響され、その量が異なります。

CT検査は、そのX線の量の差によって画像をつくることができます。

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引用元:国立循環器研究センター 循環器病情報サービス

X線管と検出器の回転スピード

ガントリー内にあるX線管と検出器は撮影中に回転しながらデータ収集を行いますが、その回転スピードは装置ごとで若干異なるものの1回転あたり最速0.275秒のスピードで回転しています。

この回転によって装置にかかるG(重力)は48.5Gにもなり、ジェットコースターに乗ったときのGが4~5Gと言われているので相当な負荷がかかっていることが分かります。

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引用元:キャノンメディカルシステムズ株式会社

② CT装置の性能

CT装置の性能は、一度にどれだけ複数の断面を撮影できるかで性能が分けられます。

この”一度に撮影”とは、ガントリー内をX線管が1回転するたびにどれだけのデータを収集できるかということです。

この撮影できる断面数は「○○列」というふうに表され、検出器が何列並んでいるかを示しています。

この列数が増えるほど、多くの断面を一度に撮影することができるので性能が良いということになります。

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1断面では1枚だけだが多断面では複数の画像が収集できる
引用元:キャノンメディカルシステムズ株式会社

CT装置の性能を「○○列」で表示

CT装置の列数は医療機関のホームページで確認することができます。

クリニックや小さな病院では4列や16列のCT装置が用いられていることが多く、大きな病院では64列のCT装置が用いられていることが一般的です。

128列以上のCT装置は主に研究機関に設置されています。

CTの性能(○○列)撮影断面数
4列CT4断面を同時に撮影
16列CT16断面を同時に撮影
32列CT32断面を同時に撮影
64列CT64断面を同時に撮影
128列CT128断面を同時に撮影
320列CT320断面を同時に撮影

CT装置は列数が増えるほど性能は良くなっていきますが、購入費やランニングコストも高くなっていきます。

列数が多いCT装置ほど撮影時間を短縮できる

CT装置の性能が良くなるほど1回転で多くの断面を撮影できるので、一度に広い範囲をまとめて撮影できるようになり、それと同時に撮影時間も短縮することができます。

この撮影時間の短縮は、検査を受ける方の負担の軽減にも繋がります。

仮に、4列CTと64列CTの撮影条件を同じにし、胸腹部CT(約100㎝)を5㎜間隔で撮影したとすると、4列CTでは撮影時間が50秒かかるのに対し、64列CTでは4秒程度で撮影が終了します。

CT1回の撮影距離必要な回転数1回転が1秒の場合
4列CT5㎜×4列=2㎝100cm÷2㎝=50回転1撮影に50秒
64列CT5㎜×64列=32㎝100cm÷32㎝≒4回転1撮影に4秒

心臓のように絶えず動いている臓器では、1拍動の間に撮影を済ますことが求められるので、基本的に64列CTが用いられます。

③ CT画像のつくり方

CT検査では最初のデータ収集で撮影部位の横断面(下の画像:緑の断面)のデータを収集し、その横断面のデータを元に任意の断面の画像を再構成したり、3D画像もつくることができます。

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引用元:ウィキペディア

画像の再構成や3D画像の作成には薄い厚さで撮影をしたデータが必要なので、多くの場合が0.625㎜以下の厚さでデータ収集されます。

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再構成された「横断面・冠状面・矢状面」の画像

CT撮影での得意な撮影部位である頭、胸部、腹部のCT画像です。

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(左)頭部CT[上から横断面・冠状面・矢状面]
(中)胸部CT[上から横断面・冠状面・矢状面]
(右)腹部CT[上から横断面・冠状面・矢状面]
引用元:医療法人 宝持会 池田病院

再構成された「3D」の画像

3D画像は大まかな状態の把握や患者への検査説明にはとても有用な画像になります。

患者からすると普通の断面像を見せられて説明されるよりも、3D画像を見ながらの方が医師の説明を理解しやすいです。

いろいろな病院のホームページに載せられているCT検査の3D画像を集めてみました。

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「頭蓋骨の3D画像」
引用元:南奈良総合医療センター
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「心臓の3D画像」
引用元:岡谷市民病院
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「腹部の血管の3D画像」
引用元:茨木県厚生連 県北医療センター 高荻共同病院
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「大腸CT」
引用元:医療法人社団 明芳会 高島平中央総合病院

④ CT検査の得意な撮影部位と病変

CT検査はX線の吸収率の差を利用して画像がつくられます。

そのため、X線の吸収率の差が多い部位において診断能の高い画像を撮影することができます。

また、CT撮影は空間分解能(細かく見る能力)が高いので、1㎜以下のとても小さな病変も見つけることが可能です。

得意な撮影部位肺、肝臓、膵臓、腎臓、骨など
得意な病変肺炎、肺がん、胸水、腹部腫瘍、尿管結石、腎結石、脳出血、副鼻腔炎、骨折など
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「新型コロナウイルスによる肺炎」
引用元:武見基金 COVID-19有識者会議
【病院の検査】CT検査をもっと詳しく解説していきます
「肺がん」
引用元:日本赤十字社 熊本健康管理センター
【病院の検査】CT検査をもっと詳しく解説していきます
「腎結石」
引用元:社会医療法人 北腎会 坂泌尿器科病院
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「脳出血」
引用元:医療法人 泰庸会 新潟脳外科病院

⑤ CT検査のながれ

CT検査には、単純CT撮影と造影剤を使用して行う造影CT撮影があります。

造影CT撮影で使用する造影剤には副作用がありますが、得られる情報量はとても多く「癌の疑いがある場合」や「血管を描出する場合」には必ず用いられます。

単純CT撮影と造影CT撮影では検査のながれに違いがあるので別々に説明していきます。

単純CT検査のながれ

単純CT検査は、入室から退室までを5~15分程度で終了することができます。

  1. 検査室に入室
  2. 必要な場合は更衣を行う。
  3. 寝台に寝る。
  4. 撮影(寝台が動いていきます)
    • スカウト撮影(本スキャンを行う位置を決める撮影)
    • 本撮影(必要に応じて息止めを行います)
  5. 撮影終了
  6. 更衣
  7. 退室
造影CT検査のながれ

造影CT検査は、入室から退室までを15~20分程度で終了することができます。

単純CT検査よりも検査時間が長くなるのは、単純撮影を行った後に造影剤を使用した撮影を追加で行うからです。

また、造影剤を使用するので、検査前に副作用の説明と検査の同意書へのサインを行う必要があります。

  1. 造影剤の問診をとる(アレルギー、既往歴、腎機能など)
  2. 検査室に入室
  3. 必要な場合は更衣を行う。
  4. 寝台に寝る。
  5. 腕の静脈にルートを確保する(造影剤を入れるため)
  6. 撮影(寝台が動いていきます)
    • スカウト撮影(本スキャンを行う位置を決める撮影)
    • 単純撮影(必要に応じて息止めを行います)
    • 造影撮影(造影剤を注入しながら撮影)
  7. 撮影終了
  8. 腕のルートをはずします。
  9. 更衣
  10. 退室
    • 造影剤の副作用が出ないか少し様子をみます。

造影CT検査の有用性と副作用

造影CT検査では単純CT検査では描出できない血管や腫瘍などを画像にすることができますが、造影剤を使用することで副作用が出ることもあるので、その使用にあたって説明後に同意書へサインを求められます。

造影剤を使用することで、

  • 造影剤を使用していないときの画像
  • 造影剤を使用してすぐの画像(動脈の画像)
  • 造影剤を使用して少ししてからの画像(静脈の画像)

といった同じ断面でも複数の画像を得ることができます。

これにより、判別が難しい腫瘤病変などの確認を行うことができます。

造影剤の使用によって副作用が出現する方もいますが、ほとんどの方は異常なく造影CT検査が終わります。

また、副作用にも軽いものから重篤なものまであり、検査中に重篤な副作用が出現した場合にはすぐさま検査を中止します。

副作用症状
軽い副作用吐き気、かゆみ、発疹など
副作用の頻度としては、5%未満といわれています。
重い副作用血圧低下、呼吸困難、意識障害、腎不全、痙攣など
副作用の頻度としては、2.5万人に1人といわれています。
血管外漏出稀に造影剤が血管外に漏れ、痛みや腫れが生じることがある
副作用が出現しやすい方にも特徴

副作用が出現しやすい方にも特徴があり、検査前の問診で以下のような既往がある方は検査を行わない場合もあります。

  • 今までに造影剤による副作用を起こしたことのある方
  • 喘息などアレルギー性疾患をお持ちの方(アレルギー体質の方)
  • 心臓の病気、腎臓の病気、糖尿病、甲状腺の病気をお持ちの方

⑥ CT検査のQ&A

CT検査に対してよくある質問項目をまとめました。

妊娠中でも検査を受けることはできますか?

妊娠中にCT検査を受けると、胎児に奇形などの影響が出ると心配される方がいますが、胎児に奇形などの影響が出る線量は研究によって調べられていて、その線量を超えないように検査が行われるようになっています。

ただ、ほとんどの医療施設において、妊娠の可能性がある方や妊娠中の方に対してのCT検査は行われていません。

体の中に金属がありますが検査を受けることはできますか?

手術などで体の中に金属が残っている場合でもそのまま検査を行うことが可能です。

他の病院でCT検査を受けていても近い期日でCT検査を再度受けてもよいですか?

複数の医療機関を受診している場合、それぞれの病院でCT検査の指示が出ることがあります。

このようなときは放射線被ばくが気になってしまいますが、放射線被ばくの影響は身体に蓄積するわけではないので心配することはありません。

ただ、同じ撮影部位のCT検査を行う場合には、他の医療施設で撮影した画像データをその医療施設に提出すれば、検査を受けなくてもいい場合があるので、病院受診の際には受付時に問い合わせを行いましょう。

放射線被ばくの量はどのくらいですか?

CT検査を受けることでの放射線被ばくは、撮影部位や撮影条件、造影剤の使用によって変わりますが、単純X線撮影検査の100~200倍と言われています。

ただ、被ばく線量が単純X線撮影検査よりも多いからと言って、身体に悪い影響が出るほどの放射線被ばくをしているわけではないので安心して検査を受けることが可能です。

また、最近のCT装置には、自動露出機構といって個人の体格に合わせてX線の量が決定するシステムが備わっているため、以前に比べて放射線被ばくの量も減少してきています。

CT検査をもっと詳しく解説|まとめ

今回は、CT検査について細かい部分が知りたい方向けに詳しくまとめました。

気になることについて理解し、参考にしていただけたらと思います。

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