医療機関で実施される検査に「CT検査」と「MRI検査」というものがあります。
この2つの検査は装置の見た目が似ているので、同じ検査なのでは?と勘違いしてしまう患者も多いです。
そのため、それぞれの検査を受けるときに「さっきも同じ検査しなかった?」「他の病院でも同じ検査したんだけど…」と不審に思われる方もいます。
このような場合、検査を担当する診療放射線技師から説明はするものの、検査の合間の短時間では理解されない方もいるのが現状です。
そのことを踏まえ、今回はCT検査・MRI検査の2つの検査にどのような違いがあるのかを解説していきます。
CT検査とMRI検査の違い
CT検査とMRI検査の違いを項目ごとに比較していきましす。
① 装置の外観
検査を受ける方が、CT検査とMRI検査のどちらの検査なのかが理解しづらい原因のひとつに「装置の外観」が似ていることが挙げられます。
CT装置とMRI装置はすごく似ていますが、よく見ると結構異なる部分があります。
とくに装置の本体部分である「ガントリーの長さ」は結構異なり、MRI装置の方がガントリーが大きく長いことが特徴になります。
CT装置とMRI装置のガントリーの長さは、装置ごとに若干の違いがありますが、以下のような長さになります。
- CT装置:100cm~150cm程度
- MRI装置:150cm~250cm程度
MRI装置の方がガントリーが長く、装置は大きくなります。
② 撮影(撮像)原理
CT検査とMRI検査の原理はまったく異なり、CT装置では「X線の吸収率の差」を利用し撮影を行い、MRI装置では「磁力」を利用して撮像を行っています。
CT検査の撮影原理
CT検査では「X線の吸収率の差」を利用して撮影を行います。
撮影は、CT装置のガントリー内部にあるX線管と検出器が対の状態で回転し、データを収集していきます。
- X線管:X線を発生する
- 検出器:撮影部位を通過したX線を受け取る
MRI検査の撮像原理
MRI検査では「磁力」を利用して撮像を行います。
人の体のほとんどが水分であるため、水分子が多く存在しています。
この水分子を強力な磁力によって励起させ、そこに特定の周波数の電波を照射します。
一定時間後に電波を切ることで水分子の励起が緩和され、この緩和の速度差をデータとして収集し画像を作ります。
③ 画像再構成の方法
CT検査では撮影時に目的としている部位の「横断面(下の画像:緑の断面)」のデータを収集します。
そして、その収集データを用いて任意の断面の画像や3D画像を再構成します。
撮影は、性能の良いCT装置ほど短時間で薄いスライス厚のデータを収集できるので、きれいな画像を再構成することができます。
それに比べて、MRI検査では目的としている部位の「任意断面」を一つずつ撮像していきます。
つまり、検査中に必要な断面を設定しながら撮像していくということです。
そのため、検査終了後に追加で必要な画像があっても再構成することは難しいです。
仮に、Bの画像がうまく撮れていなかった場合には、再構成ではなく撮り直さないといけなくなります。
④ 得意な撮影部位と病変
CT検査は「X線」を用いて撮影しているので、X線の吸収率の差が大きい部位の撮影に優れています。
そのため、肺・腹部・骨などの撮影が得意であり、また、脳出血やくも膜下出血などの検出にも優れています。
MRI検査は「磁力」を用いているので体内の水分子の量に影響されます。
そのため、水分子を多く含む部位の撮像に優れ、脳・脊髄・関節などの撮影が得意です。
ちなみに、水分子が少ない骨や空気については撮像できません。
検査 | 撮影(撮像) | 得意 |
---|---|---|
CT検査 | X線の吸収率 | 肺・腹部・骨・脳出血・くも膜下出血 |
MRI検査 | 磁力・水分子 | 脳・脊髄・関節・早期の脳梗塞 |
⑤ 検査室の構造
CT装置は「X線」、MRI装置は「磁力」を用いるため、それぞれの検査室の構造もそれに合わせて特殊な造りになっています。
CT検査室ではX線が漏洩しないように壁や天井に「鉛シールド」が施され、MRI検査室では磁力が漏洩しないように壁や天井に「電波シールド」や「磁気シールド」が施されています。
このシールドがあることで検査室の外部への影響を防ぐことができます。
部屋 | 遮蔽すべきもの | 構造体 |
---|---|---|
CT室 | X線 | 鉛シールド |
MRI室 | 磁気・電波 | 磁気シールド・電波シールド |
CT検査室やMRI検査室にシールドが設置されていなかった場合には「X線」や「磁力」を遮蔽できないことになります。
CT検査室からはCT撮影のたびにX線が検査室の外に漏れてくることになり、検査室の近くにいる人はみんな放射線被ばくをすることになります。
また、MRI検査室からは強い磁気や電波が漏れることになり、検査室の近くにある医療機器や携帯などに影響を及ぼす恐れがあります。
⑥ 検査前の更衣
CT検査とMRI検査はどちらの検査も更衣が必要です。
検査にあたって画像に影響を与えるものはすべて外し、検査着に着替える必要があります。
CT検査では 金属・硬質性のプラスチック などの「X線を吸収するもの」、MRI検査では「金属(磁性体)」がそれにあたります。
とくに、MRI室は金属を持ち込むことによって大きな事故になることがあるので、更衣後のチェックも徹底されています。
検査 | 障害になるもの |
---|---|
CT検査 | 金属・硬質性のプラスチック |
MRI検査 | 金属(磁性体) |
MRI検査は、手術などによって体内に金属がある場合にも検査を受けれないことがあります。
- 心臓ペースメーカーを留置されている方
- 人工内耳の方
- 古い人工心臓弁の手術を受けられている方
- 血管へのステント留置術を8週間以内に受けられた方
- 脳動脈クリップが入っている方
- 骨折等によりボルト固定がされたままの方
- 眼に微細な金属片が入っている方(または入っていると疑わしい方)
- 金属の義眼底の方
- 磁性アタッチメント義歯(入れ歯)の方
- その他体内に金属物を入れられている方
気になる方は担当のスタッフに聞いてみましょう。
⑦ 検査時間
検査内容によっても異なりますが、ほとんどの場合にCT検査の撮影時間は5分~15分程度、MRI検査の撮像時間は15分~30分程度になります。
CT検査の撮影時間
CT検査では撮影部位の横断面のデータを収集し、検査終了後にそのデータから任意の断面の画像を再構成することができます。
そのため、5~15分程度の短い時間で検査を終了することができます。
MRI検査の撮像時間
MRI検査では約5分の撮像を必要な断面の数だけ繰り返していきます。
そのため、5つの種類の撮像の指示があれば「5分・5分・5分・5分・5分=25分」の撮像時間になります。
撮像時間は指示が増えるほど延びるので、MRI検査はCT検査に比べて検査時間が長くなります。
⑧ 放射線被ばく・身体への影響
CT検査はX線を用いて行う検査になるので放射線被ばくがあります。
その被ばく量は健康診断で受ける単純胸部X線撮影の100~200倍になります。
そのため、妊娠中の方は検査を受けることが原則できません。
MRI検査は磁力を用いた検査であり、X線を用いていないので放射線被ばくはありません。
ただ、眉墨や刺青、タトゥーなどをしている方は、何度も何度もMRI検査を受けていると徐々に色が変色してくることがあるので注意が必要です。
⑨ 検査中の圧迫感
検査中の圧迫感についてですが、MRI検査の方が圧迫感がかなりあります。
MRI装置はCT装置に比べてガントリー内が狭く、またガントリーが長い分、奥まで入らないといけません。
そのため、閉所恐怖症があると検査できない方も多くいます。
また、それに加えて、MRI装置では「ギギギ」「ガガガ」「ゴゴゴゴ」など工事現場のような大きな機械音が鳴り響くので、その音が嫌だと言われる方もいます。
CT検査とMRI検査の違いは?|まとめ
今回は、CT検査とMRI検査の2つの検査について比較したものを表にまとめると以下のようになり、2つの検査が大きく異なることが分かります。
CT検査・MRI検査について疑問に思われる方は参考にしていただければと思います。
CT検査 | MRI検査 | |
---|---|---|
装置の見た目 (ガントリーの長さ) | 100cm~150cm | 150cm~250cm |
撮影原理 | X線 (X線の吸収に関係) | 磁力 (水分子の量に関係) |
画像再構成 | 収集した横断面のデータから任意の断面を再構成 | 撮像時に任意の断面のデータを収集 |
画像 | 骨は白く、空気は黒 (X線の吸収率による) | 骨、空気は無信号 (水分子の量による) |
得意な撮影部位 | 脳・肺・腹部・骨 | 脳・脊髄・関節 |
得意な病変 | 頭部外傷・脳出血・くも膜下出血 | 早期の脳梗塞 |
検査室の構造 | 鉛シールド | 磁気シールド・電波シールド |
更衣 | 金属や硬質性のプラスチックを取り外す | 金属(磁性体)を取り外す ※更衣は入室前に行う |
検査時間 | 5分~15分 | 15分~30分 |
放射線被ばく | あり | なし |
体の固定 | 圧迫感(小) 軽いベルト固定のみ | 圧迫感(大) 専用のコイルとベルトでしっかり固定 |
撮影方法 | 寝台に寝た状態で撮影 (寝台は撮影中に動く) | 寝台に寝た状態で撮影 (寝台は撮影中は固定) |
検査中の音 | 静か | 工事中のような音でかなりうるさい |