【病院の検査】MRI検査をもっと詳しく解説していきます

「CT検査とMRI検査の違いは？似ているように見えても全然違う!!」で、MRI検査の概要について簡単に触れました。

今回は、MRI検査について細かい部分が知りたい方向けに、さらに詳しくまとめていきます。

MRI検査をもっと詳しく解説

MRIという名称は”Magnetic Resonance Imaging”を略したもので「磁気共鳴画像」という意味があります。

強力な磁力と電磁波を使って体の任意断面を撮像する検査で、電波をあてて出てくる信号を読み取り、いろんな方向の断面画像をつくることができます。

検査中に「ドンドン」「コンコン」と工事中のような大きな音がするのが特徴であり、狭い空間で検査をするので圧迫感が強いです。

今回は、このMRI検査について以下の項目を解説していきます。

MRI検査の解説項目

1. MRIの撮像原理
2. MRI装置の性能
3. MRI画像のつくり方・撮像時間
4. MRI検査の得意な撮影部位と病変
5. MRI検査のながれ
6. MRI検査のQ&A

① MRIの撮像原理

ヒトの体は年齢ごとで若干の差はありますが、その半分以上（約50～80％）が水分でできており、MRI検査はその水分を利用して検査を行っています。

MRI検査は、体内の水分（水素原子）に対して、「磁力」や「電磁波」を用いて核磁気共鳴という現象を起こし、収集したデータを画像化します。

② MRI装置の性能

MRI装置は磁力を使って検査を行います。

そのため、装置ごとの「磁力の強さ」は検査に大きく影響を及ぼし、磁力の強さが大きいほど性能が良く細かい検査を行うことができます。

現在、医療施設では「0.4テスラ、1.5テスラ、3テスラ」の３種類の性能のMRI装置が主に使用されており、0.4TのMRI装置は整形外科病院で、1.5TのMRI装置は脳神経外科病院で使用されることが多いです。

整形外科領域で使用される「0.4ＴのMRI装置」

0.4TのMRI装置は、肩関節・膝関節・頸椎・腰椎・関節内の靱帯や神経などの整形領域の撮像を主に行います。

磁力が弱いので頭部や腹部などの撮像はうまくできませんが、オープン型の装置なので検査中の圧迫感が少なくてすみます。

脳神経外科領域で使用される「1.5ＴのMRI装置」

1.5TのMRI装置は、整形領域、頭部、腹部などすべての部位の撮像が可能です。

ただ、筒状の検査装置に身体を入れて、20～30分程度動けなくなるので、検査中の圧迫感が大きく閉所恐怖症の方は検査を拒否されることが多いです。

現在、多くの医療施設で稼働しているのはこのタイプの1.5ＴのMRI装置です。

３TのMRI装置になると磁力は強いのですが、設置費用などのコストが高額になります。そのため、大学病院や研究施設で用いられることが多いです。

③ MRI画像のつくり方・撮像時間

MRI検査の撮像は、医師が指示した断面ごとに撮像を行っていきます。

撮像時間は、1つの断面の撮像に5～10分程度の時間がかかるので、撮像する断面の数が多くなるほど検査時間は長くなることになります。

そのため、頭部のスクリーニング検査などでは15～20分程度の検査時間ですみますが、詳しく検査することになると、30～40分程度と検査時間は延びることになります。

仮に、医師の指示が「A・B・C」の3つの断面であった場合には、MRI検査の時間は約15分程度で終了することになります。それに対して、「A・B・C・D・E」と5つの断面の指示であった場合には、検査時間が約25分程度と長くなります。

検査中に「体動があった場合」には撮り直しになる

MRIの撮像では、ワンセットの画像を5分かけて少しずつ撮像していくわけではなく、５分間収集した画像データから画像を撮像します。

つまり、検査中に一瞬でも動いてしまうと撮像中だったワンセットの画像データはダメになってしまうので、そのセットを再度撮り直さないといけなくなります。

その場合には検査時間はもちろん延びていきます。

撮像されたMRI画像

下の画像は、MRI検査で撮像された頭部のMRI画像です。

④ MRI検査の得意な撮影部位と病変

MRI検査は、体内の水分（水素原子）に対して、磁力と電磁波を用いて画像データを収集します。

そのため、体内の水分が多い脳・脊髄などの撮像に優れています。

それとは逆に、空気やガスが多い部位（肺、腸管など）の画像データは収集できないので撮像はできません。

得意な撮像部位	脳・脊髄・関節・骨盤腔内臓器など
得意な病変	早期の脳梗塞・脳ドッグ

⑤ MRI検査のながれ

MRI検査には、単純MRI撮像と造影剤を使用して行う造影MRI撮像があります。

造影MRI撮像で使用する造影剤には副作用がありますが、得られる情報量はとても多く、「癌の疑いがある場合」には必ず用いられます。

単純MRI撮像と造影MRI撮像では、検査のながれが多少異なるので別々に説明していきます。

造影MRI検査の有用性と副作用

造影MRI検査では、単純MRI撮影では確認しづらい腫瘤病変などを造影剤を使用することにより描出することができますが、造影剤を使用することで副作用が出ることもあり、その使用にあたってはしっかりした説明をしたあとに同意書へのサインを求められます。

造影剤を使用することで、

• 造影剤を使用していないときの画像
• 造影剤を使用したときの画像

といった同じ断面でも異なる画像を得ることができます。

これにより、判別が難しい腫瘤病変などの確認を行うことができます。

造影剤の使用によって副作用が出現する方もいますが、ほとんどの方は異常なく造影MRI検査が終わります。

また、副作用にも軽いものから重篤なものまであり、検査中に重篤な副作用が出現した場合にはすぐさま検査を中止します。

副作用	症状
軽い副作用	吐き気、動悸、頭痛、かゆみ、発疹など 副作用の頻度としては、約1％です。
重い副作用	呼吸困難、意識障害、血圧低下、ショック、末梢神経障害による激しい痛み、全身性の線維症など 副作用の頻度としては、0.05％以下です。
血管外漏出	稀に造影剤が血管外に漏れ、痛みや腫れが生じることがある

⑥ MRI検査のQ&A

MRI検査に対してよくある質問項目をまとめました。

MRI室で聞こえる「シュッコン、シュッコン」という音は何？

MRI検査室に入ると「シュッコン、シュッコン」と機械音がしています。

この音の正体はMRI装置内にあるコンプレッサーの音です。

MRI装置は、強力な磁場を発生させるときに装置の一部から高熱が発生するため、常に冷却する必要があります。

この冷却には液体ヘリウムを用いますが、この液体ヘリウムも冷却する必要があり、その際にコンプレッサーを使用しています。

「シュッコン、シュッコン」という音はコンプレッサーの音です。

検査中にする工事現場のような音の原因は？

MRIの検査中は、「ガガガガ」「ガンガンガン」「ビービービー」などの工事現場のような大きな音がしています。

この音は、装置内のコイルが振動している音です。

MRI装置は、装置内部に取り付けられているコイルを使って、磁場の強さや方向を変化させ、いろいろな画像を得ることができます。

この磁場の切り替えは高速に行われていて、切り替えの際の大きな力によってコイルが振動しています。

MRI室に金属を持ち込むとどうなりますか？

MRI室への金属の持ち込みは禁忌になっているため、MRI室への入室時には金属探知機などを用いて厳重に金属を持っていないかチェックをします。

もちろん、これは医療従事者であっても同じで、検査を行う診療放射線技師や看護師もペンやはさみなど持ち込まないように注意をしています。

MRI装置は装置の中心ほど磁力が強くなり、また、その引き付けられる金属の大きさが大きいほど強い力で引き付けられます。

クリップやペンなどの小さいものなら引き付けられても人の力で対抗することができますが、車イスや酸素ボンベなどの大きなものになると、MRI装置から引き離すことが困難になります。

「神戸大学医学部附属病院 放射線部」によって、MRI装置の吸着実験を行った動画がありますので興味がある方はご覧ください。

動画は酸素ボンベがMRI装置に吸着される様子を撮影しています。

MRI検査をもっと詳しく解説｜まとめ

今回は、MRI検査について細かい部分が知りたい方向けに詳しくまとめました。

気になることについて理解し、参考にしていただけたらと思います。

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