日本では、地震による建物の倒壊を防ぐために耐震基準を定め、その耐震基準を満たした建物でないと建てることができないようになっています。
そして、建物の耐震性は主に4つの要素をもとに計算され、「耐震等級1、耐震等級2、耐震等級3」の3段階に分類されるようになっています。
ちなみに、建築基準法では、耐震等級1が建物の満たすべき最低限の耐震性能の水準と定められており、耐震等級1の耐震性能に満たない建物は建てることができないようになっています。
今回は、建物の耐震性能の影響する4つの要素と耐震性の判断基準である「耐震等級1・2・3」についてまとめていきます。
建物の耐震性能に影響する4つの要素
建物の耐震性能は、耐震等級1・2・3の3つの等級で表されます。
そして、その耐震性を計算する上では4つの要素が大きく影響しています。
- 建物の重さ
- 耐力壁
- 耐力壁や耐震金物の設置場所
- 床の耐震性能
① 建物の重さ
地震の揺れの影響は、建物の重量が大きいほど受けやすくなります。
そのため、基礎部分に乗っている建物、屋根部分が軽い建物の方が耐震性に優れていることになります。
建物は軽いほど耐震性能が優れています。
② 耐力壁
耐力壁とは、地震や強風などで生じる横からの力に抵抗できる壁のことです。
真上からの重さには「柱」も支える役割を果たしますが、横からの強い力には「耐力壁」の存在がとても重要になります。
建物に使用する耐力壁が多ければ多いほど、耐震性に優れていることになります。
建物に使用する耐力壁が多ければ多いほど、耐震性に優れています。
③ 耐力壁や耐震金物の設置場所
耐震性能を高める耐力壁や耐震金物は、ただ取り付けるだけではなく、その効力を発揮できる場所にバランスよく配置することが重要です。
耐力壁や耐震金物、各階の柱の配置によって水平方向の耐力「保有水平耐力」が決まります。
耐力壁や耐震金物は、バランスよく配置することで耐震性を高めることができます。
④ 床の耐震性能
建物の耐震性能では、床の耐震性能も重要な要素のひとつになります。
建物内では壁と床は繋がっているため、耐力壁が地震の揺れに対して踏ん張るためには、それを支える床が必要になります。
床の耐震性能が高いと、地震が起きたときに耐力壁にバランスよく地震の揺れを分散させることができます。
耐力壁を支える床の耐震性も重要な要素のひとつです。
耐震等級1・2・3の概要
耐震等級には「耐震等級1、耐震等級2、耐震等級3」の3つがあります。
この耐震等級は、耐震等級3になるほど耐震性が優れた建物であり、前述した耐震性能に影響する4つの要素をもとに分類されています。
耐震等級1
「耐震等級1」は、建物に備わるべき最低限の耐震性能として建築基準法に定められています。
そのため、耐震等級1の基準をクリアできない建物は建てることはできません。
耐震等級1の耐震性能は、震度6強~7の地震に対して耐えることができるように構造計算されており、震度5程度の地震に対して建物の損傷防止に効果があるように構造計算されています。
- 建物に最低限必要な耐震性能
- 耐震等級1の基準をクリアしないと建物は建てることはできない
- 震度6強~7の地震に対して耐えることができるように構造計算されている
- 震度5程度の地震に対して建物の損傷防止に効果があるように構造計算されている
耐震等級1は建物すべてに最低限求められる耐震性能です。
耐震等級2
「耐震等級2」は、耐震等級1の1.25倍の耐震性能があります。
耐震等級2以上の耐震性能がある建物は「長期優良住宅」として認定されるようになっています。
学校や病院などの災害時に避難場所として指定される公共施設は、耐震等級2以上の強度がないといけません。
- 耐震等級1の1.25倍の耐震性能
- 長期優良住宅として認定される
- 学校や病院などの災害時に避難場所として指定される公共施設
学校や病院などの災害時に避難場所として指定される公共施設は、耐震等級2以上の強度がないといけません。
耐震等級3
耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍の耐震性能があります。
耐震等級2と同じように「長期優良住宅」として認定されます。
消防署、警察署などの災害時の救護活動や災害復興の拠点となるような施設は、耐震等級3で建てられています。
- 耐震等級1の1.5倍の耐震性能
- 長期優良住宅として認定される
- 消防署、警察署などの災害時に拠点場所となるような施設
消防署、警察署などの災害時の救護活動や災害復興の拠点となるような施設は、耐震等級3で建てられています。
耐震等級と地震の揺れの強さ
現在の日本の建築基準法では、耐震等級1に満たない建物は建てることはできないようになっています。
耐震等級1は「震度6強~震度7程度までの震度に耐えうるもの」となっていて、このときの地震の揺れの強さは約400galに相当します。
つまり、耐震等級1の建物は400galの地震の揺れの強さにまでなら耐えられるということになります。
耐震等級2は「耐震等級1の1.25倍の強度」、耐震等級3は「耐震等級1の1.5倍の強度」の基準になっているので計算すると、耐震等級2は500galまでの揺れの強さ、耐震等級3は600galまでの揺れの強さに耐えることができることが分かります。
耐震等級2 = 400 × 1.25 = 500gal
耐震等級3 = 400 × 1.5 = 600gal
耐震等級1 | 耐震等級2 | 耐震等級3 | |
---|---|---|---|
耐えれる強さ | 400galまで | 500galまで | 600galまで |
耐震等級を過去に起きた地震の揺れの強さと比べてみると…
過去に起きた大きな地震の規模を下の表にまとめてみました。
震度 | マグニチュード | ガル | |
---|---|---|---|
阪神淡路大震災 | 6強 | 7.3 | 891 |
新潟県中越地震 | 7 | 6.8 | 1,722 |
東日本大震災 | 7 | 9.0 | 2,933 |
熊本地震前 震 | 7 | 6.5 | 817 |
熊本地震本震 | 7 | 7.3 | 899 |
表を見て分かることは、すべての地震のガル(揺れの強さ)が耐震等級3の基準である600galをはるかに超えていることです。
これだと、すべての家が倒壊してしまうことになってしまいます。
ただ、実際には地震発生後、倒壊していない建物もたくさんありました。
この理由は、ガルは一瞬の揺れの強さを表したものだからです。
建物の倒壊には一瞬の「揺れの強さ」だけではなく、「揺れている時間」や「共振現象」などの他の要因との組み合わせが重要になります。
大規模地震の揺れの強さは、建築基準法の耐震性能をはるかに超えてきます。
家を建てられる方は、耐震等級だけを見るのではなくどのような災害対策をしているハウスメーカーかもしっかり比較しましょう。
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建物の耐震性能に影響する4つの要素とは?耐震性の判断基準「耐震等級1・2・3」|まとめ
今回は、建物の耐震性能の影響する4つの要素と耐震性の判断基準である「耐震等級1・2・3」についてまとめました。
現在の日本の建築においては耐震等級3がもう当たり前になってきましたが、その耐震等級3の中でもハウスメーカーごとで差があります。
住んでいる家の耐震性能の確認はもとより、これから家を建てる場合にはどのような家づくりをするのかの情報収集もしっかり行いましょう。